さて、昼食後の休憩のあとは、clareさんについて、最初のサイトに向かう。
mt. borradaileの概要を聞きながら。 ボラダイル山と呼ばれているけれども、 一つの岩山があるわけではなく、ここは、 たくさんのrock formationが集まった場所で、 大きな川の周囲に広がった湿地帯から たくさんの岩山が顔を出している感じである。 その中に、ボラダイル山と呼ばれる一つの岩山があり、それはU字型をしていて、 現在もそのU字に囲まれた内側は外部の人間には公開されていない。 そこは、全大陸の中でも5本の指に入る もっとも聖なる地のひとつだと考えられるという。 有名なUluru(エアーズロック)も間違いなくその一つだが、 mt. borradaileはそれに匹敵するということだ。 それは、サイトの規模のことだけではなく、 より多くの言語グループによって重要な聖地と認識されていたということ。 最初のサイトで、このような聖地を抱くこのエリアの豊かさを すぐに理解することになる。 あぁ、それにしても、人に運転してもらって案内してもらうって、 楽チンだな~。そして、本当に美しい眺め。 1930年製だったかな、骨董品のようなジープで、サイトに向かう。 このあたりの岩山は、海岸線の上昇で削られた場所。 言われてみると、今も岩に波が打ち付ける様子を容易に想像できる。 そうしてできたオーバーハングやケイヴが、先住民の住む場所となった。 そうしたケイヴの一つに入ってみると、 気持のよい風が絶えず抜けていく。 外の暑さがうそのようだ。 サイトは、必ず、よい眺めと、良い風を持っている。 極上の居心地の良さなんである。 さて、岩絵の方は、ものすごかった。 これまでもアメリカ、中国、スウェーデンやノルウェイ、 そしてオーストラリア各地で、 こうした岩絵のサイトを訪ねてはいたけれど、 このサイトひとつだけでも、これまでのメジャーなサイトの何倍もある。 そして、それが次のサイトへと切れ目なく続いている。 そしてちょっと歩くとまた次の巨大なサイト。こんなの見たことがない。 よほど豊かで平和な場所だったに違いない。 想像力とイメージと物語を、これほどまでに湧出させることができるほどに。 そして、5万年ほどに渡って描かれ残された岩絵に共通する、 この場所特有なルールが伝えられているのだが、 ぼくはそれがとても気になり、clareに何回も説明をねだってしまった。 それについてはここでは詳しくは書かない。 ただ、不思議な親近感を感じたことだけを書いておこう。 ぼくがこれまで創作の中で問うてきた、そして感じてきたことが、 いまの美術の中では失われ忘れられてしまったが、それは決しておかしなことではなく、 5万年にもわたって続けられてきたはるかな実践の中にも仲間がいたことを教えてもらった。 さて、岩絵そのものはあまり載せる気にならないのだが、 これだけはアップしよう。 巨大な虹蛇。 下から見上げた時の効果は抜群である。 本当に気持ちの良いシェルターだった。 岩絵だけではなく、岩山そのものが、気の遠くなるような時間。 clareが示しているのは、かつての砂浜の跡。 ゴンドワナ大陸の頃のものだろうか? この岩山は、かつて浅い海の底で堆積した砂でできている。 それが隆起して再び上昇した海によって削られ今の姿に。 岩絵の時間。人間の時間。そして、岩の時間。地球の時間。 5万年にわたる岩絵の重なりだけではなく、 地球規模の気の遠くなるような時間の重なりあう場所。 でもそれぞれがかすれてしまうのではなく、 鮮やかなままに隣り合い重なり合って今の時を生きている。 帰り道、珍しい野生のハーブにだけ住む特別なバッタの幼虫。 乾季の、一番涼しい時期ということだけど、まだ緑がいっぱい。 これがもっと緑になるというのだろうか。 いろんなワトルの花が満開だった。 オーストラリアの国の花ワトル。 ワトルの花について、なにかとても美しい詩のようなことを jeanatteが教えてくれたのに、忘れてしまった。 オーストラリア人なら子どものころに必ず習うという、その言葉。
by izuminohanashi
| 2008-06-10 21:43
| mount borradaile
|
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